第5回 WPC に参加して
代議員 浜田朋子
今年の6月4日から7日までの四日間、国立京都国際会館で、「WPC 2019、第5回世界パーキン
ソン病学会」が開催されました。京都での開催ですから高松からは日帰りできるものではない
ように思われて 、一時は出席を止めようかと思いましたが、周りの方々の協力が得られました
ので6月4日と5日の二日間だけ参加しました。
WPC というのは、学会と言っていますが、実は患者と医師とそれから介護家族が一つの場所
でパーキンソン病について語り合う ことを目指しており、普通の常識から言えば画期的なこと
です。普通の医学学会とは違って最先端の研究報告もあれば、患者の主張を表現することがで
きるビデオ大会もあれば、患者によるポスターの作成展示もできます。大変ユニークな会議で
あると思います。ただ国際会議ですから英語で全ての行事が行われることになり日本人はコミュ
ニケーションに苦痛を感じます。さらに医学学会と同じように参加費が大変高額でした。その
価格はそれまでの4回とあまり変わらないでしょうが、患者が負担するには高額であったと思い
ます。また日本の場合、介護者やヘルパーは参加するために費用を負担することは求められない
と思いますが WPC の場合高額の費用を負担しなければなりません。このような理由で、今回の
会議では、開催地となった日本の患者の参加者数が十分に揃わず開催のために力を尽くした方々
を悩ませたと聞いています。
6月4日はプレコングレス コースと呼ばれるもので基本的な内容のものでした。英語で行われ
ましたが、日本語の同時通訳がついていました。私はこの時素敵な体験をしました。パーキン
ソン病について一流の医学専門家による講義がありました。日本人の講演者ももちろん英語で
講義をされました。私は興味深く聞いておりましたが、ふと気が付くと私のすぐ近くに車椅子
に乗った男性がおられました。大変体が不自由なようで口が全くと言っていいほど動かずしゃ
べることができないのでした。それなのに質問の時間になると必死になって手を上げて質問し
たいと意思表示しようとするのですが、誰にも理解してもらえず質問の場が与えられませんで
した。
私はあまりに気の毒に思い、講演された先生方にちょっとこちらへ来ていただくようにと
お声掛けしましたら、お二人の先生が来てくださいました。その車椅子の方はシンガポール
からお見えでした。おいでになったお二人の先生はちゃんと発音できないその車椅子の方か
らなんとか事情をききとり丁寧にアドバイスをされました。車椅子の方は、 DBS を受けて
おられて電圧調整の失敗で全く何も話せなくなったようでした。アドバイスされた先生の
思いやりに溢れる姿勢、そしてシンガポールから自分の病気をなおしたいその一心で京都
まで来た車椅子の男性、どちらも私には大きな感動でした。あの車椅子の男性はシンガ
ポールに帰ってどうされたのでしょうか。自分の病気をあそこまでの力と勇気で治したい
と頑張る強さ、それがあればパーキンソン病もきっと負けるでしょう。
6月5日は本会議の一日目でした。会議に出席せず、つまりあまり真面目に勉強はせず、他
の国から来た患者さん達のところを回って私の共著書「オンオフのある暮らし」の英訳ダ
イジェスト版を、宣伝配布のために配りました。患者も付き添いの家族も皆さん明るく
朗らかで気持ちよく受け取ってくださいました。皆がそれぞれ自分の限界と可能性を探り
ながら精一杯生きているのだと思いました。
充実した二日間でした。ただ.私は初めて車椅子を使っての参加でしたので車椅子の難し
さを学びました。そして会場となった建物が古いためかバリアフリーが徹底されていない
ので歩行障害のあるものにはいささかつらかっただろうと思います。バリアフリーという
ことについては、これから先、私には真剣に考えなければいけない問題になるだろうと思い
つつ今日となりました 。バリアフリーについては文字通り自分自身の課題であると心をきめ
て先に進むつもりです。
代議員浜田朋子